大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和60年(行ケ)165号 判決

(争いのない事実)

一 本件に関する特許庁における手続の経緯、本件審決理由の要旨、本願商標及び引用商標の構成及び指定商品並びに引用商標についての商標登録出願及び商標登録の各年月日が原告主張のとおりであることは、当事者間に争いがない。

(本件審決を取り消すべき事由の有無について)

二 前記争いのない引用商標の構成(別紙(二)のとおりの構成)によれば、引用商標は、斜め上段に切欠部を有する細い線の円輪図形を配し、その切欠部に下段の欧文字に比べて細く小さい書体で「SUN」の欧文字を傾斜横書きし、下段に右「SUN」の欧文字を含む図形部分に比べ、目立つて大きくゴシツク体で「RINGSUN」の欧文字を横書きしたものからなる文字図形の結合商標であるところ、その構成態様をなす文字及び図形の大きさ並びにそれぞれの配置に徴すれば、上段の「SUN」の欧文字を含む図形部分と下段の「RINGSUN」の欧文字部分は分離してそれぞれが取引者、需要者の注意を惹き易い部分であることは一見して明らかであるということができ、したがつて、引用商標からは、右の上段部と下段部のそれぞれから、表示するとおりの「リングサン」の称呼を生ずるものと認め得るけれども、同時に、右の上段の文字図形の結合部分をみるに、「SUN」の欧文字部分は、英語として極めて読み易く、かつ、理解し易い語であるのみならず、その表示方法も傾斜横書きで独特であるから、図形部分に比し、看者の注意をより惹き易い部分ということができる。そして、通常の取引者、需要者は、最も親しみ易く、かつ、理解され易い部分から生ずる称呼、観念をもつてこれを附した商品を指称するものというべきであるから、引用商標からは、「サン」の称呼をも生ずるものとみるのが相当である。なお、原告は、引用商標の上段の図形部分は、下段の「RINGSUN」の欧文字より生ずる称呼、観念を図形で表現したものと考察されるから、引用商標は、図形と文字とによる表現方法を結合させて特定の観念、称呼を生ぜしめるようにしたものであり、引用商標の上段図形部分と下段欧文字部分が視覚上分離して看取されることはあり得ず、引用商標が全体で一つの商標を構成するものである以上、上段図形部分と下段欧文字部分とが、それぞれ独立して自他商品の識別標識としての機能を果たし得るということはない旨主張するが、引用商標の下段の「RINGSUN」の欧文字と「SUN」の欧文字を含む図形部分である上段部分は、それぞれ分離されて看者の注意を引くものであり、これらの部分から「リングサン」の称呼を生じ、それぞれが自他商品の識別標識として機能するとみられるだけでなく、同時に上段部分からは、別個に「サン」の称呼をも生ずるものというべきことは、前認定説示のとおりであり、この認定を覆し、原告の右主張を認めるに足りる資料はない。したがつて、原告の叙上主張は、採用するに由ない主張というほかない。

叙上説示したところによると、本願商標は、引用商標の商標登録出願の日の後の商標登録出願に係るものであり、本願商標と引用商標とは、称呼において類似し、かつ、指定商品において相抵触する(両者の指定商品が相抵触することは、原告の認めて争わないところである。)から、本願商標は引用商標と類似し、商標法第四条第一項第一一号の規定により登録を許されないものというべきである。

(結語)

三 以上説示したとおりであるから、その主張のような違法のあることを理由に本件審決の取消しを求める原告の本訴請求は、理由がないものというほかはない。よつて、これを棄却することとする。

〔編註その一〕本件の特許庁における手続の経緯および審決理由の要旨は左のとおりである。

一 特許庁における手続の経緯

原告は、昭和五三年一月一三日、別紙(一)のとおり「SUNN」の欧文字を横書きしてなる商標(以下「本願商標」という。)について、第二四類「楽器、演奏補助品」を指定商品とし、昭和四八年商標登録願第一一九五八四号の分割出願として商標登録出願をしたところ、昭和五六年八月五日拒絶査定を受けたので、同年一〇月八日これに対する審判を請求し、昭和五六年審判第二〇一七五号事件として審理されたが、昭和六〇年七月一八日、「本件審判の請求は成り立たない。」旨の審決(以下「本件審決」という。)があり、その謄本は、同年八月二八日原告に送達された。

二 本件審決理由の要旨

本願商標の構成及び指定商品は、前項記載のとおりであるところ、原査定において拒絶理由に引用した登録第五二六八二七号商標(昭和三二年一二月一三日旧類別(大正一〇年農商務省令第三六号商標法施行規則第一五条所定)第二二類「ハーモニカ」を指定商品として商標登録出願、昭和三三年九月一一日設定登録、昭和五三年一二月一二日商標権存続期間の更新登録がされたもの。以下「引用商標」という。)は、別紙(二)に表示したとおりの構成からなるものである。

〔編註その二〕本件に関する商標は左のとおりである。

別紙(一)

本願商標

<省略>

別紙(二)

引用商標

<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!